株式会社ジャパンガスエナジー様
次の10年の歴史は自分たちで創る
株式会社ジャパンガスエナジー | ||
事業内容 | 液化石油ガス、液化天然ガス、石油類、石油化学製品、石炭類及びその他高圧ガスの輸入、販売、輸送、貯蔵 | |
設立 | 2009年4月1日 | |
所在地 | 東京都千代田区内幸町2-2-3 日比谷国際ビル17階 | |
資本金 | 35億円 | |
代表取締役社長 | 吉田 正俊 | |
従業員数 | 約100名 | |
URL | https://www.j-gasenergy.co.jp/ |
※:実施当時の情報です。
■テーマ・提供サービス
テーマ | 提供サービス |
(1)『業務標準化プロジェクト ~ProjectX(TEN)~』 |
業務プロセス |
(2)『人事制度プロジェクト』 |
仕組み |
■企業背景・抱える課題
株式会社ジャパンガスエナジーは、JXTGエネルギー株式会社、日商LPガス株式会社と伊藤忠エネクスのLPガス事業を統合し2009年に設立された。設立以来、社内基幹システムの陳腐化をはじめ、業務プロセス等の見直しはこれといって行われてこなかった。システムの使い勝手の悪さを業務オペレーションでカバーしているうちに、業務がますます複雑化し属人的になってしまった、情報の一元管理もままならない――このような課題を抱え、同社は基幹システムのリプレースを検討してきた。しかし、現状の複雑で無駄の多い業務のままシステムを入れ替えたところで、基幹システムのカスタマイズ等で多大な費用が発生し、うまくいかないことは容易に予想できた。
同社のほとんどの社員はベテランの出向者である。そのために、次のようなことが考えられた。
・出向社員は数年したら出向元に戻ってしまうため、属人化の加速が止まらない。よって、業務引継ぎの際に問題となること。
・前向きに一律一様な改革を自社のこととして受け止められない。
・年齢は比較的高い管理職層が多く、部下となる若手が少ないため“担当業務を行うマネージャ”にならざるを得ないこと。
このような背景と抱える課題の打破に向けて、当社出版の『業務改善手法入門』を読んだ同社企画部マネージャの石曽根氏から当社への問合せがきっかけでプロジェクトが立ち上がった。
■支援内容
(1)『業務標準化プロジェクト ~ProjectX(TEN)~』
各部門からメンバーが参画し、まずは1年をかけて取り組んでいく本プロジェクトのビジョンを策定した。同時に、業務の棚卸に着手し、業務フローの作成に取り掛かった。
プロジェクトビジョンは、創立からのこれまでの10年とこれからの10年を念頭に置き、メンバーから大切にしている言葉、思い、価値観を文言化していった。
プロジェクト開始当初は、「出向社員が出向先会社で行うプロジェクトのビジョンを本気で考えられるのだろうか…?」と心配したものの、その心配は無用であったことに気づく。一般には珍しいケースだが、それだけ「所属(出向元企業)ではなく自分が地に足を付けている会社を変えていきたい」という強烈な思いを持っていたようだ。あらためて、プロジェクトメンバーを選んだ石曽根氏、土谷氏の「人の目利き」に感心した次第だ。プロジェクト名称は、くしくも、プロジェクトを立ち上げたこの年が同社創立10周年を迎えたことと、次の10年を考える節目であることから、本プロジェクトの名称を『ProjectX(Ten)』と命名した。かつてNHKで放送していた“プロジェクトX(エックス)”に引っ掛けたのは言うまでもない。名付け親は土谷氏である。
業務の棚卸と業務フローの作成を通じて、プロセス的な問題や組織的な問題などが顕在化した。これらを部門の個別問題、全社共通問題に分類し、さらに優先順位をつけて、原因分析、解決策の設定へと展開をした。表層的な問題をみると現場の問題だと思われていたものも、原因の分析を行うことがで、経営的な問題であることがみえてきたり、簡単に直せると思っていた問題も実は根が深く、いろいろなところに影響を与えてしまうため、よく考えて直さないといけないことがわかった。出向者であるメンバーが同社の次の10年を考える姿勢は、同社の環境ならではのものであった。自分たちの日頃の業務と向き合い、ときに外部環境とのしがらみにもまれ、大変な局面も多くあっただろう。それでも、個別問題と全社共通の基本的な問題に対する課題を見つけ出し、改善計画を立案することができた。また、システム構築を視野に入れながらプロジェクトを進めたことで、システムベンダーへのRFPも策定することができた。
今後は、部門ごとに改善計画通りに活動を推し進めていくと同時にシステム構築にも注力していく予定だ。
(2)『人事制度プロジェクト』
いつか新入社員を採用し、プロパー社員が欲しい。
前述した(1)業務標準化プロジェクト ~ProjectX~ から出てきた課題の一つである。この課題は前々から話題には上がっていたが、行動を起こしてこなかった。今回は、企画部と総務人事部が動きを起こし、2020年入社に向けた新入社員の採用活動を始めた。これはとても大きな変化である。新入社員を迎え、プロパー社員へ育てていく運びとなった。これに伴い、2019年度は人事制度の策定に取り掛かり始めた。策定にあたり重視していることは、同社の経営理念をスタートラインとする基本的価値観である。そして、株主や同業他社の評価制度の要求項目などを参照しながら、同社はどのような人材を求めるのかを明確にすることから着手した。
今後は、昨今の“働き方改革”を意識しながら、どのようなステージを経て成長していくか。業務を行うに際して要求されるスキルや知識は何か。マネジメントスキルも身につけるようにするかなど、キャリア・デザインの議論を進めていく予定である。来春には人事制度が整い、同社初の新入社員が入ってくる。
■事務局から活動全体をとおして
写真左から執行役員総務人事部長 横山豊氏、企画部マネージャー 石曽根章氏、企画部長 土谷朋丈氏、総務人事部マネージャー 早川昇氏
(1)『業務標準化プロジェクト ~ProjectX(TEN)~』
(株)ジャパンガスエナジー(以下JGE)の企画部 石曽根です。商社からJGEに出向させて頂いております。「流通関連の事業買収・再編」を専門分野とし経験を積んできました。JGEの企画部に来てすぐに目についたことは会社経営の基本インフラ(ハードもソフトも)が老朽化し、メンテナンスにも苦慮しながら日々のオペレーションを凌いでいることでした。中計に記載されていた基幹システムリプレースも何ら手がつけられておらず、システム担当者はトラブル対応に追われる毎日でした。そんな中、システムは素人でしたが「これまでのプロマネ経験からなんとかなるだろ」と問題提起し、この会社の状況・特性を考え、JGE社員自らの手による業務の整理と標準化を最優先と考え、Webを調べ、たくさん読んだ業務改善本の中から、世古さん、渡邊さんの 書籍に出会い、アポを申し込んだのがカレンコンサルティングとの始まりでした。
紆余曲折ありましたがプロジェクト企画案が通り、各部署のエースをプロジェクトメンバーとしてノミネートし、地方も含め週に一度東京本社に集まっての1年間プロジェクトが始まりました。一番の苦労はメンバーが日々業務を抱えながら週1日を投じるため、プロジェクトの時間の最大活用でした。作業ではなく知見の引出しとなるようにと各回の準備に注力しました。各メンバーが、JGEを自分の会社として「こうあるべき」「こうありたい」という強い意思を持ちつづけ積極的に取り組んで頂いたこと、そして社内調整を先回りしてやってくださる土谷部長の後押しに支えられて、「やってよかった」プロジェクトになりました。プロジェクトの成果物を次期基幹システムと次期中計にふんだんに織り込もうと息巻いている現在です。メンバーの方にはこれらを具体的に落し込む際に各組織の要として再び活躍頂く予定です。
カレンコンサルティングの世古さん、渡邊さんのノウハウ、引出しの多さには驚きです。特にプロジェクトの進みやこちらの要望に合せてのプロジェクト内容の柔軟な変更・対応はまさに痒いところに手が届き、「まさに、それです!」を何度発したか分かりません。また渡邊さんの冷静な整理と、女性メンバーの支えにもなってくれた心使いはとても心強かったです。カレンコンサルティングが他のコンサルティング会社と違うところは、クライアントの要望である「表目的」だけでなく、その深層にある「裏目的」の点も織り込みながら業務改革、さらには会社全体の変革を進められる点です。
(企画部マネージャ 石曽根章)
(2)『人事制度プロジェクト』
私は、ジャパンガスエナジーの株主のひとつである、JXTGエネルギーから出向してきました。来てすぐに驚いたのは、ここでは出身会社を超えて、社員みんなが会社を大切に思い、将来を真剣に考えている姿です。新卒採用開始はその成果の表れであり、未来に向けての新たな挑戦です。その気持ちは学生にも伝わり、意気に感じた優秀な人材が集まりました。そんな彼ら彼女らに最高の成長機会を提供したく、カレンコンサルティングのサポートを得て、人事制度の構築に着手しました。このプロジェクトでは、人事制度の両輪に「育成と評価」を据え、各部門の代表を募りました。そして、ジャパンガスエナジーらしさにこだわった「求める人材像、ありたい姿」について熱のこもったディスカッションから取り掛かりました。新入社員の成長、社員みんなの成長、そして会社の成長、そんな三位一体を実現する人事制度の構築を、カレンコンサルティングとプロジェクトの仲間と楽しんでいます。
(執行役員 総務人事部長 横山豊)
業務標準化PJでの議論で派生した、新卒を採ろうではないかという機運が2018年の夏頃に高まってきました。知識も時間もない中でしたが、土谷リーダー旗振りの元、2020年新卒採用活動がスタートし、携わることになりました。採用活動中は不安が多い日々でしたが、協力会社のサポートをはじめ社内のバックアップ、優秀な採用担当スタッフのおかげで、良い人材を採用することが出来ました。私自身、採用の知識がなかったので一から勉強しました。また採用活動を丁寧に行えたことは良かったと思います。採用活動と今取り組んでいる人事制度策定は、一体するものだと思っています。これから入社してくる方々の将来をしっかり考え、内容を丁寧に作っていくことで良い人事制度が出来ると確信しています。今後もカレンコンサルティングの知恵・知識のアドバイスをいただきながら、人事制度設計をしています。
(総務人事部マネージャー 早川昇)
全体を通じて
石曽根マネージャのアポから始まったカレンコンサルティングとの出会い。一言でいうと、刺激と変革の勇気をいただいた瞬間であり、現在も私の中で増幅し大きな財産となりつつあります。
セールス担当3年を経て、一時 出向元に帰還、現在企画部に再出向し、丸3年が経過しましたがこの間、会社の問題点を内外から見ることができました。社員にはそれぞれ問題認識はあるが、当事者意識の希薄さとベテラン社員にありがちな上手い言い訳でその場をしのぐ、結局本質的な課題解決に至らない事が繰返されていました。そしてその蓄積からなる閉塞感と最後はあきらめモード…。基幹システムリプレースも同様、重要課題でありながら遅々として進んでいませんでした。この際、システム担当ではなかった石曽根氏の手腕に賭けてみました。
彼の提案は業務改善から始めること、コンサルタントの力を借りることでした。正直、当社の規模や社員のスキルやモチベーションを考えると、コンサルタントを入れることで果たして成功するのか迷うところはありましたが、とにかく会って話を聞いてみることにしました。世古さん・渡邊さんの口から出てきた言葉は「我々はノウハウや知恵、考え方はいくらでも提供しますが、自分の頭で考え行動するのは皆さんです」「我々は自主性や主体性を大事にしています。そうでなければうまくいきません。場合によっては中止することもあります」というものでした。自分の覚悟が足りなかったことを痛感させられ、そしてまさに私が求めていた我が社に足りない『主体性』を企業風土として根付かせるチャンスではないかと直感しました。
「未来志向で新たな10年を作り上げていこう!」石曽根リーダーの本気度と比例してプロジェクトメンバーの気持ちの変化を感じとることができるようになったころから、プロジェクトでも問題になった新入社員の採用をプロジェクトメンバーの苦労に答えるためにも是非とも実現させたいと強く思うようになりました。折しも上司の役員も同じように問題意識を持っていたことから、「タイミングは今しかない」と決断し、経営層、株主を説得し採用活動に踏み切る事が出来ました。
現在はカレンコンサルティングに引き続きお手伝いいただいている人事制度設計のフルメンテナンスに注力しながら、次の採用活動の準備も進めているところです。また、次期中期経営計画策定にも着手しており、こちらもカレンコンサルティングにアドバイスをいただいております。この度の中計でも自主性、主体性を強く意識した内容で仕上げるべく、JGEの未来つくりといっても過言ではない意気込みで取り組んでいます。
プロジェクトをきっかけに、次々に施策を打ち、新生JGEの歯車が動き、閉塞感から脱却することができました。私自身サラリーマン人生最終コーナーを回ったと思っていたところでしたが、カレンコンサルティングと出会ったことでスタートラインに戻ったような感じです(笑)。師匠の世古さん、渡邊さんにはこの場をお借りして心より感謝いたします。
(企画部長 土谷朋丈)
■後記
変革プロジェクトの成否のかなりの部分は、「経営者の真剣度」は言うまでもないが、同じくらい重要な要素は「事務局の人材が持つエネルギーの大きさ」である。窮地に立ってもへこたれない打たれ強さ、前向きで強力な変革エネルギー、人の気持ちがわかる繊細を兼ね備え大胆なことを行う実行力等である。これらの要素を事務局の石曽根氏、土谷氏は持ち得ていたことはプロジェクトの大きな推進力であった。
設立からの10年を振り返って、もっと早い時期にいろいろなことに着手していればよかったという多少の後悔をバネに次の10年を出向社員が自社のことのように真剣に考えてプロジェクトを推し進める。その中で陳腐化してしまった社内基幹システムの改修をはじめ、新入社員の採用にこぎつけ、会社説明会や採用面接など大変ながらも「10年のブランクを経て入社希望の学生と話ができるって嬉しいですね!」と土谷氏が語ってくれたことが印象的だった。これまでの道のりは、同社の置かれた環境を考えれば決して楽なものではなかったと思われる。事務局とメンバーの皆さんの活動は称賛に値する。2020年春には同社初の新入社員が入社してくる。初めて部下を持つマネージャが出てくるはずだ。そのために社内でコツコツと人事評価や人材育成の仕組みづくりに取り組んでいる。内定を出した学生に対し、「君たちが新しい10年の歴史を作っていく第一期生だ」ということを素直に伝えたと聞いている。人を採用する・人を育成するということは、親元から子供を預かるように、企業として責任を持つことである。標準化プロジェクトをはじめ、社内の仕組みを整え、新たな風を向かい入れる準備しているジャパンガスエナジー――この記事を目にしている同社の取引先企業をはじめ、グローバルにエネルギー業界で活躍してみたいと思う学生諸氏はぜひ、同社の門を叩いてみてはいかがだろうか?
(記:Carren Consulting 世古雅人/渡邊清香)
(文中敬称略)